- 部下が同じミスばかりして、全体の業務に支障をきたしている。
- 何度指導しても成長せず、安心して仕事を任せることができない。
- このままでは指導している自分の方がどうにかなってしまいそうだ。
管理職の方の中には上記のような経験をした方も少なからずいらっしゃると思います。
多少の出来不出来の差はあるのはもちろん承知していても、あまりにも出来なさすぎる部下に対してはフラストレーションもつい溜まってしまうものです。
そんな部下でも上司はいつまでも面倒を見続けなければならないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。上司は業務を適切に行うために、時には鬼となって部下を切り捨てなければならない時が存在します。結果としてそれが、職場を守ることや自分自身を守ることにもつながるのです。
しかしいざ自分が使えなさすぎる部下の上司になった時、「本当に見切りをつけてもいいのものか。」「見切りをつけたとしても、その後どう行動するべきか。」ということがイマイチ分からないという方も多いと思います。
今回はそんな出来なさすぎる部下に対して見切りをつけるべきタイミングやその後の対処法について解説していきます。
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部下に見切りをつける必要性
部下に見切りをつけることは上司としての自分の能力不足が原因である気がして心情的にもつらいものです。しかし、だからといっていつまでも踏ん切りをつけないでいると上司側も職場も少なくないデメリットを抱えてしまうのです。
上司の負担が増える
仕事ができない部下は上の者がいちいち管理しなければ業務もままなりません。できない部下にとっては、他の者なら一人で可能な業務が上司や周囲の人間のリソースを奪うことでしか成立しないのです。
上司にとって、安易に見切りをつけるのは部下への管理能力が不足しているという評価につながるだけでなく、長期的に見てもかえって職場にダメージを与えるのではないかという懸念があります。
しかし、上司も人間ですから、いつかは成長してくれるという期待が幾度となく裏切られ、失望を繰り返すことはフラストレーションの原因にもなります。
このご時世、イライラからハラスメントに発展してしまっては元も子もありません。
職場のパフォーマンスが下がる
業務は個人で成立するものではありませんから、できない部下の存在が職場全体を不公平な環境に陥らせます。
仕事のできる者、できない者が同様の評価や給与をもらっていれば、当然できる者は職場や上司に不信感を抱きます。また、できない者の遅延や失敗のしわ寄せが他の者にいくでしょう。
周囲には特定の人間だけがひいきにされているようにも映りかねません。最悪、優秀な人間が職場を離れることもありえます。
上記のような職場では全体が団結して最高のパフォーマンスを発揮することは難しく、生産性の低下は避けられません。
このようにできない部下は上司や周囲の人間の精神的、肉体的リソースを奪っていきます。
見切りをつけてはいけない部下の特徴
部下に見切りをつけずにいることの危険性は上記の通りですが、だからといって常にできない部下を見切っていては職場が立ちいかなくなってしまいます。
企業としても新人を採用・育成するコストが余分にかかり、得策とはいえません。ここでは周囲よりできないからといって安易に見切りをつけず、もう少し付き合ってみた方がいいかもしれない部下の特徴を紹介します。
やる気のある部下
能動的で向上心のあるのにできない部下は気合が空回りをして、良くない結果に落ち着いていることがあります。このようなタイプはアイデアマンであることも多く、その豊富なアイデアを成功に導くだけの経験値が不足しているから失敗するのです。
また単純に他人より試行回数や行おうとする業務が多いからミスも同じように多くなってくる部下もいます。これも自分のキャパシティや力量を把握していないがゆえの空回りです。
どちらの場合も上司が寛大さを示し、失敗を成長過程と捉えられれば、いずれは大きく花咲いてくれるでしょう。
着実に成長している部下
部下に早く仕事ができるようになって独り立ちして欲しい気持ちは分かりますが、何事にも要領の悪い人間は存在します。教えたことがなかなかうまくいかず、同じ失敗を繰り返してしまうような部下です。
しかしゆっくりとですが成長していることが確認できるならば、他人より成長が遅いという理由で見切りをつけることはお勧めできません。
なぜなら、このタイプは一見成長ぶりが遅々としたものでも、経験から自分の中に成功への法則性を見出しているからです。それゆえに身に着けた事柄を忘れにくいという利点があるのです。
社会経験が足りない部下
新人でも社会経験の量は人によって違うものです。社会経験が少ないと挨拶や敬語などをはじめとしたマナーや常識が不足し、周囲の状況が見えず、業務に際して余裕が持てません。
結果、仕事に対して委縮し、周囲に助けを求められなくなっているのかもしれません。
しかし、上記の問題もまた上司が普段から部下に業務に関して積極的にコミュニケーションをとることや、当人が経験値を積むことで改善が十分に期待できます。
このタイプはスタートダッシュが悪いからといって見切りをつけず、人格面、能力面共にきちんとした管理やサポート次第で十分に成長できる可能性があります。
見切りをつけるべき部下
以下に挙げる特徴の部下は上司や周囲の人間、企業にとって不利益な人間たちです。管理職として早急に見切りをつけるべきです。
やる気のない部下
何事に対してもモチベーションが上がらず、指示待ちな姿勢の人間は業務上の問題も自分自身のことと考えられません。
このタイプは自主性が欠如しているため、自分で考えて行動することや失敗の原因を洗い出すことをしません。そのため物覚えが悪く、同じミスを連発します。
仕事をコストパフォーマンスだけで考えている部下も当てはまります。同じ給与をもらうなら、いかに少ない労力の消費で済ませるかというのが彼らの興味対象だからです。楽をした分、周囲の人間が割を食う可能性もあります。
対処法としては部下の行動の成否に関わらず、まずは取り組む姿勢そのものを肯定したり、称賛したりすることでモチベーションを喚起することが挙げられます。
他には業務の改善点を上司が一緒になって考えることで、能動的に思考することや行動する癖をつけさせることです。時としてはおだてて動かすようなしたたかさも必要でしょう。
協調性のない部下
周囲とコミュニケーションをとらず、報連相をおろそかにする部下や、上司の指示を聞かず物事を進める部下がこれに当てはまります。
同じ部署では社員は互いに助け合って業務を進めなくてはなりませんから、一人でもこのような人間がいると全体の輪を乱しかねません。
できるだけ一人で解決したいのも理解できますが、周囲が気づいた時には深刻な事態に陥っていることもありえます。
人とのコミュニケーションをとることに遠慮がちな人物なら対処法もあります。普段から、プライベートでも業務のことでも積極的に周囲からコミュニケーションをとることで、部下の側から話しかけやすい関係性を作ることです。
上司や職場が寛大な雰囲気ならばいずれ自分から必要なコミュニケーションをとってくれるでしょう。
もし部下が個人的に上司と馬が合わないという問題だった場合は他の部下に指導を任せることで解決することもあります。この場合は部下が誰とならうまくやれるかという日常の観察が必要になります。
しかし、こだわりの強さやプライドの高さから協調性が持てないタイプであった場合は厄介です。このタイプも上記の対処法によってある程度は改善が期待できますが、それでも変化が見られない場合は諦めて見切りをつけましょう。
素養のない部下
そもそも根本的にその職務に向いていない人は経験値を多少積んだからといって、改善は期待できないでしょう。極端な話だと、見知らぬ人と関わるのが苦手なのに営業の仕事をしているといったような人のことです。
世の中、生活のために好きでもない仕事に従事している人間は無数にいますが、そういった人間でも自らの成長や成果に対して喜びを感じることはあります。
しかし素養のない人間は自分の成長や成果が少なく、それによって生まれるはずのモチベーションは期待できません。こうして素養のない人物は負のスパイラルに陥ります。
人材教育は長期的な視野に基づいて行うべきであることは言うまでもありません。
しかし素養のない部下の未来の成長に期待して職場にとどめておくことは、周囲の人間や企業にとってマイナスなだけでなく、他のことにチャレンジする機会を奪っているという点では当人にとっても良いことではありません。
人格に難のある部下
一口に人格に難があるといっても様々なタイプがいますが、ここでは性根が曲がっているような人物を指します。
性根の良くない人間は職務上のミスの言い訳や他人に責任転嫁するだけでなく、悪い例だと周囲に自分のやりたくない仕事や自分の尻ぬぐいをさせることまでありえます。
このタイプの悪辣なところは業務外でも周囲の人間関係に悪影響を与える可能性があることです。他人の悪口ばかり言っている、横柄な態度をとるような人物は一緒にいて決して気持ちのいい人間ではありません。
もしかしたら上記の振る舞いは自分の境遇や評価に対する苦しさの裏返しなのかもしれませんが、だからといって周囲にネガティブな感情をもたらす人間は部署全体にとってマイナスなのはいうまでもありません。あまりにひどいようなら他の部下のためにも早急に見切りをつけましょう。
見切りをつけた部下への処遇は?
たとえできない部下に見切りをつけたといっても、それは上司の心中の結論に過ぎず、現場の問題は解決されていません。同じ職場を共有する以上、今後も何らかの対処や管理は必要不可欠です。ここでは見切りをつけた部下に対する処置を紹介します。
専門的なスキルを身に着けてもらい戦力化する
国家資格や難関資格を取得してもらうことで専門的なスキルを身に着けてもらえば、戦力として活躍してくれるかもしれません。また、難易度の高い資格や需要が大きい資格を保有していれば、転職もしやすくなるため、自ら退社の選択をする場合もあるでしょう。
今の部署に居続けてもらう
最低限の業務はこなせるような人物なら、同じ職場に居続けてもらうことも視野に入れましょう。前述の通り、企業としては新しく人を採用・育成することは余計なコストがかかるからです。
その場合は上司側ができない部下に対しては遂行可能な業務のみを割り振るという管理が必要になります。しかし部下ができないままである以上、上司は継続的な負担がかかり、周囲の人間が職場に不公平な印象を持つリスクを抱え込むことになります。
上司としてはできない部下に居続けてもらうメリットとデメリットを勘案しなければなりません。
上司や周囲の人間ができない人間に対して期待値を下げて、イライラしたりフラストレーションを溜めたりせずに運用できると確信できるなら、この選択もありでしょう。
他の部署に異動させる
ある程度大きな企業なら能力の低い人間の移動先として、左遷先があったりします。こういった場所では配属された人間はそれ以上の出世は望めません。最低限の仕事しか用意されていないために周囲や企業に迷惑をかける心配も小さいです。
左遷先の用意がない企業でも、他の部署に配属してもらうことは可能です。部下が今の上司や職場環境が合わないだけだった場合、他の上司なら今の部署では開花しなかった才能をうまく成長させることができるかもしません。
人事課や本人に異動を打診する際、業務評価などの客観的な評価を忘れないようにしましょう。でないと周囲に上司が嫌いな部下を追い出そうとしているととられかねません。
漠然とした内容ではなく、どのような点がどのくらい満たしていないかまで伝えたうえで異動させたい旨を相談すれば、本人も不満を抱きにくいでしょう。
退職勧告
いよいよどうしようもない時は、退職勧告も選択肢になってきます。
しかし、法律では企業側は相応の理由を提示できなければ正社員を解雇できません。よって異動を打診する際と同様、客観的事実の提示とそれに基づく相談という形で話を進めましょう。
あくまで企業側も進退窮まって、やむを得ず退職勧告をしているという姿勢を崩してはなりません。一度の面接で事を運ばず、何度か面接を繰り返して本人に改善の機会を与えたが一向に報われなかったという実績を作るのも手です。
退職を強制することはパワハラ認定や、ネットに情報を企業のネガティブな情報を発信されるなどの風評被害につながります。本人の将来を思っての打診であることを明示できれば、双方納得という形に持っていけるでしょう。
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まとめ
長期的視点に立った時、使えない部下に見切りをつけるか否かという問題はすぐに結論づけるのは難しいと思います。見切りをつけることは上司としてもう部下にできることはないと、自らの無能力を暴露するようで気持ちのいいことではないでしょう。
しかし上司は部署全体を管理する者として、個人的な感情よりも運用の精神で臨まなければなりません。常に自らの選択がもたらすプラスとマイナスの要素を天秤にかけなければ部署全体を効率化できません。
時としてできない部下を冷徹に切り捨てる選択は上司としての自分自身や他の部下たち、そして企業を守ることにつながるのです。
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