製品やサービスの企画・設計をする際に、以下のように悩むことはありませんか?
- 競合製品から乗り換えてもらうためにはどうしたらいいだろう
- 自社製品を継続して使ってもらうための価格はいくらくらい?
- どうしてあの製品には乗り換えが多いのだろう。
これらは、スイッチングコストに関する知識を得ることで、その理由を把握できるようになります。
この記事では、スイッチングコストの概要や代表的な種類とその特徴、またスイッチングコストを使った戦略などについて解説します。
スイッチングコストを戦略的に活用して、自社の製品やサービスのシェアを高めていきましょう。
スイッチングコストとは?
まず、スイッチングコストの概要やスイッチングコストの影響について解説します。
スイッチングコストは商品の乗り換えに必要なコスト
スイッチングコストは、商品(物、ブランド、サービス)を乗り換える際に発生するコストです。
日常生活ではスイッチングコストを考慮している場面が、以下のように多くあります。
- 新しい冷蔵庫に買い換えよう
- ティッシュペーパーをいつもと違う銘柄にしよう
商品やサービスを切り替える場合、商品そのものの金額だけでなく、手続き費用や手間、時間など多くの負担が生じます。その負担(コスト)がスイッチングコストです。
商品やサービスを選択する人の根底には、スイッチングコストが大きな判断材料であります。
スイッチングコストはビジネスを成功させる鍵
売上の向上や安定を実現し、ビジネスを成功させるためには、スイッチングコストの活用が重要です。
スイッチングコストは、顧客を自社の製品やサービスに囲い込むためには、切り離せない検討要素といえます。
顧客の囲い込みを実現するためには、商品に対する満足感や商品への価値が重要です。
しかしそれだけではなく、商品を他のメーカーに変えるときの手間の大きさや操作手順の違いなども影響するため、いかに顧客が変更することを面倒に感じさせられるかも必要な観点といえます。
スイッチングコストの3つの種類
代表的なスイッチングコストは、以下の3つに分類できます。
金銭的コスト
金銭的コストは、商品やサービスの切り替えにかかる「費用」です。新たな商品に切り替える際には、下記のように様々な費用がかかります。
- 既存の商品を解約する費用
- 早期解約の違約金
- キャンセル料
- 新規契約の手続き費用
- 年会費
- キャッシュバック
- 賃貸契約の仲介手数料
このように金銭的コストは、顧客が他の商品と数値的に比較できるので購買の判断をする際の決め手となりやすいスイッチングコストといえます。
物理的コスト
物理的コストは下記の通り、主に「時間」や「手間」のことを指します。
- 切り替えに必要な手間や時間
- 解約や新規の契約のために連絡を取り、移動する手間
- 切り替え前の商品を処分する手間
このように物理的コストは、顧客が商品を手放すことに価値を実感できるかがポイントです。
新しいものに切り替えることで、更なる時間や手間の効率化が図れれば、切り替えようという気持ちになるでしょう。
心理的コスト
心理的コストは、下記のような商品の切り替えの際に生じる心理的負担です。
- 新しく切り替える面倒さ
- 切り替え前の商品への愛着
- 新しい商品の使用方法を覚えることのめんどくささ
- 新しいサービスのシステムを理解する手間
心理的コストは、数字では表せないことが特徴です。有名ブランドを身につける人はブランド商品が自分の価値を表現するものであり、自己の価値を上げると考えています。
そのためブランド志向の人は、心理的コストが高い傾向にあります。心理的コストが高い場合には、他の商品へ切り替えるリスクが低いので顧客の流出を防ぐことが可能です。
スイッチングコストを使った戦略
スイッチングコストをうまく活用することで、大きな利益を得られる可能性があります。
ここでは、スイッチングコストを考慮した戦略について、具体例を挙げながら説明します。
新規顧客を獲得する
新規顧客を獲得するには、スイッチングコストを下げることが必要で、「簡単に切り替えられる」と顧客が感じることが大事です。
金銭的なスイッチングコストを下げるための具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
- 入会金無料
- 年会費初回0円
- 全額返金保証
- 無料体験
- 無料モニター
- 試供品、サンプル
- 切り替える際のキャッシュバック
顧客にとって失敗してもリスクが少ないと感じてもらうことが重要です。
また、切り替えを検討するにあたり、物理的・心理的負担を低くすることも大切です。
- 手続きがすぐにできる、簡単
- 情報が豊富で安心
- 今よりも楽になった
- 十分にサポートしてくれる
切り替えることへのハードルを下げてあげることが顧客獲得に結び付きます。
既存顧客を維持する
顧客を手放さないためには、スイッチングコストを高くする必要があります。
顧客が他の商品に切り替えるハードルを高く感じてもらうことで、顧客の囲い込みを図ります。
顧客が買い替えやサービスの解約をする際に負担を感じることは、下記の通りです。
- 解約費用が高い
- 解約手続きがややこしい
- 解約したいのに連絡が付きにくい
しかし、これらの対策では顧客の流出をある程度防ぐことができても、商品を継続利用する際の満足感が得られません。
また、口コミが悪化することで新たな顧客が得られないといったデメリットにも繋がります。
そこで、以下のように顧客が利用を継続するメリットを実感できる施策への取り組みが重要です。
- アフターサービスが充実している
- 24時間対応してくれる
- 長期契約することで割引される
顧客との関係性を築くことで、商品を継続して利用する安心感が持てます。
結果的に顧客の継続率を伸ばすことに繋がるのです。
スイッチングコストを活用する際の注意点
スイッチングコストを活用する際には、以下のような点に注意が必要です。
顧客のニーズを具体的に把握する
スイッチングコストをうまく活用するには、商品の乗り換えに必要なコストを細かく把握することが重要です。
日々の状況に合わせて顧客のニーズも変化するため、売り手がそれらを把握しなければ商品の価値を活かすことは難しいでしょう。
顧客の関心やこだわりに寄り添うことで、商品のよさをスムーズに伝えることができます。
売り手は常に、顧客のニーズと企業のスイッチングコストを日々照らし合わせ検討し続けることで、収益の維持・向上を実現できます。
競合商品と差別化する
顧客の囲い込みには、競合との差別化が重要です。
モノが溢れる便利な社会となり、顧客のニーズは従来よりも多様化してきています。
顧客は複数の商品を比較しながら、自分のニーズとどれだけマッチしているかを踏まえて商品を選択するため、顧客のニーズにマッチした商品やサービスを提供することが重要です。
他企業の商品と差別化した特徴が顧客のニーズに合死していれば、顧客を引きつけるための大きな魅力となります。
企業が差別化を図る取り組みの例として、以下が挙げられます。
- ポイント制の導入
- ポイントの還元率が高い
- 利用を継続すると定期的に特典がある
- 他の競合品にはない特徴的な独自の機能
顧客にとって、商品を持ち続けることが大きなメリットと感じ取れるかが重要です。
顧客のニーズに応えるためには、信頼関係の構築は切り離せません。
このように顧客の心理的ニーズを満たすことも他企業と差別化するポイントといえるでしょう。
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まとめ
スイッチングコストを使った戦略は新規顧客の獲得と既存顧客の維持に大きな影響を与えます。
スイッチングコストを活用する際は、顧客のニーズを把握できているか、他の商品との差別化が強みになっているかが重要です。
商品やサービスの性質に合わせて、流入しやすく、流出しにくい仕組みをスイッチングコストの観点で構築するといいでしょう。
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