見込み顧客に対して非対面で営業活動を行うインサイドセールスは、これまでのような対面の営業活動が新型コロナウィルスの影響で制限されたことが後押しとなります。
新しい生活様式の中の営業手法のひとつとして、多くの企業が導入するようになりました。
インサイドセールスは、どのように運用するのが効果的なのでしょうか。
この記事では、営業効率がアップするインサイドセールスのコツについて紹介します。
インサイドセールスとは
インターネットの普及とWeb技術の発展を背景に、オフィスから出ることなく、メールや電話で見込み顧客にアプローチするインサイドセールスが、広大な国土のため対面の営業活動が物理的に難しかった米国で1990年代に生まれました。
移動時間をかけることなく、効率よく見込み客にアプローチできる営業手法としてスタートしたインサイドセールスですが、最近はその特徴を活かし、従来の営業手法と組み合わせた新しいセールススタイルとして活用されています。
まずは、インサイドセールスの目的や役割について解説します。
インサイドセールスの目的
フィールドセールスの中でも「訪問営業」「契約・受注獲得」など、クロージング活動に集中させるのが、インサイドセールスの主な目的です。
これまでは、ひとりの営業担当が見込み顧客の選定やアポイントメントの獲得、訪問営業、契約獲得(クロージング)までを担ってきました。
インサイドセールスの導入は、その一連の過程を分業化し、営業効率をアップさせるメリットがあります。
非対面でできる商談機会獲得までをインサイドセールスが担い、その先をフィールドセールスが担うスタイルが、最近はひとつのビジネススタイルとして企業の中に浸透してきています。
インサイドセールスの役割
メールや電話、オンライン会議ツールを用いて、主に新規見込み顧客の獲得と既存顧客へのフォローアップが、インサイドセールスの主な役割です。
見込み顧客のニーズを把握し、確度の高い顧客にアポイントメントを取り付け、フィールドセールスに引き継ぎます。
また、見込み顧客との接点を増やし、自社の商品やサービスに対する購買意欲を高めてもらうことも、インサイドセールスの大切な役割のひとつです。
インサイドセールスが営業活動の前半部分を担えば、フィールドセールスは契約や受注の獲得のみに集中でき、営業効率のアップにつながります。
インサイドセールスのコツとは?
では、営業効率がアップするインサイドセールスのコツにはどのようなものがあるのでしょうか。
次から、4つの視点で解説していきます。
1.インサイドセールスのコツ【戦略編】
まずは【戦略】の面から、インサイドセールスのコツを解説します。
1-1.顧客のマインドを考える・カスタマージャニー
インサイドセールスでは、顧客の行動や思考(マインド)を考えることがとても重要です。
商品やサービスを購入、または利用する人物像を想定し、その行動や思考、感情を分析します。消費者が購入に至るまでのプロセスを時系列で考えて、効果的なアプローチのシナリオを作ります。
このような考え方を、マーケティング用語では「カスタマージャーニー」といいます。
見込み顧客の現在のマインドを分析し、その目的に沿った資料や提案書を準備して、効果的なアプローチを仕掛けるようにしましょう。
1-2.フィールドセールスとの情報共有
先に触れたように、インサイドセールスの役割は新規の見込み顧客や商談の機会を獲得し、訪問営業や契約・受注を担うフィールドセールスに引き継ぐことです。
確度の高い顧客のリストだけでなく、インサイドセールスの時点で得た情報を正確に伝えることがとても重要になります。
フィールドセールスとの情報共有では、インサイドセールスで得た見込み顧客の情報内容をポイント化し、現在のステージを数値で示すスコアリングをしておくことも効果的です。
スコアリングを実施すると、営業活動の優先順位が分かりやすくなり、効率的にアプローチできるようになります。
そのためには、正確な情報を社内で共有できる仕組みづくりの検討も必要になるでしょう。
2.インサイドセールスのコツ【実践編】
次は、【実践】の面からインサイドセールスのコツを解説します。
2-1.メール
営業メールをもらったことがない人を探すのが難しいくらい、メールでの営業的アプローチは一般的となりました。
メールでのアプローチの最大のポイントは、「メールをもらった側にイニシアティブがある」ことです。
メールを読むか読まないかを決めるのは受け取り側次第であることを、しっかりと認識しておきましょう。
メールの開封率を上げるためには、緊急性や限定性に言及する、受け取り側にメリットがあると感じさせるなど、受け取り側が読みたくなる件名(タイトル)を付けるようにしましょう。
件名以外でも、伝えたいことを簡潔にまとめたり、メリットの根拠を示したり、面談予約や資料・サンプル請求など、次へのアクションを取りやすくしたりなど、最後まで読んでもらえ、次につながる内容の本文になるように工夫しましょう。
2-2.電話
まずは、インサイドセールスのチームメンバーのトークスキルを均質化するために、トークスクリプトを作りましょう。
トークスクリプトとは、サービスの種類や案内の内容をステップごとに作成した営業台本のことで、見込み顧客のマインドを後押しし、確度を高めるために重要な役割を果たします。
見込み顧客の現在の状況や要望など、今後のアクションの判断基準となる回答を引き出せるような質問集があるとよいでしょう。
また、顧客の話を聞いてニーズを汲み取ることも、成果を上げるためには必要なポイントです。
トークスクリプトの質問集を活用し、できるだけ相手に話をさせるようにしましょう。
ヒアリングした内容を正確かつ効率的に記録できるように、ヒアリングシートのフォーマットも定期的に見直すことも大切です。
2-3.顧客に合った事前準備
電話やメールで見込み顧客にアプローチする際には、提案内容を複数用意しておくと、成果が上がりやすくなります。
見込み顧客の「購入」につながるマインドはさまざまです。
カスタマージャーニーの考え方を参考に、見込み顧客が持つ課題を想定し、それに合わせた提案をすることが大切です。
効果的なアプローチにするための事前準備の重要性を、しっかりと認識しておきましょう。
2-4.活動記録
インサイドセールスは「多くの見込み顧客に接触すること」が求められますが、それに加え、見込み顧客からできるだけ多くの情報を取得することも求められます。
得た情報を活かすためには、活動を簡単に記録できる仕組みを作っておく必要があります。
せっかく得た大切な情報も、フィールドセールスに正確に伝わらなければ、今後の対応や営業アプローチの考察に活かせません。
後の項目で触れますが、CRM(顧客管理システム)やSFA(セールスフォースオートメーション)といった、専用のツールの導入を検討するのもいいでしょう。
インサイドセールスで得た情報が整理され、営業活動に活かせる有力な情報として活用しやすくなります。
3.インサイドセールスのコツ【PDCA編】
インサイドセールスには、新規見込み顧客の獲得や既存顧客の育成以外に、受注や失注などの結果に関わらず、商談が終わった後に取り組むべき施策があります。
自分たちが取ったアプローチやアクションが適切であったのかなど、その内容を検証し継続的にPDCAサイクルをまわしていけば、ビジネスを持続的に発展させることができます。
インサイドセールスのコツを【PDCA】の視点から解説します。
PDCAとは
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価・測定)→Action(改善)の頭文字を取ったもので、PDCAサイクルとも呼ばれ、これを繰り返すことで継続的な業務の改善を促す技法のことです。
インサイドセールスは、PDCAサイクルによる営業活動改善の役割も担っています。
step1.受注・失注の要因分析
まずは、受注と失注の要因を把握しましょう。
何が成功につながったのか、なぜ失注に至ったのかなどの要因を分析すると、これまでの営業活動の課題が見えてきます。
電話アプローチのトークスクリプトや提案内容、フィールドセールスへの情報提供方法など、分析で明らかになった問題点を、PDCAサイクルの観点で改善していきます。
失注だけでなく、受注につながった成功パターンについても、その要因をしっかりと分析しておくことが大切です。
step2.案件を深堀り調査
失注したからといって、落ち込む必要はありません。
何が悪かったのか、なぜ失注したのかなど、失注案件を深堀りしてその原因・要因を分析して改善策を見つけましょう。
また受注したからといって、喜ぶだけで終わってしまうのも、もったいない話です。
受注につながったポイントを整理して、記録しておくことが大切です。
終わった案件には、さまざまなヒントがたくさん詰まっています。
深掘り調査をしっかりと行い、次へのステップにつなげられる企業が、ビジネスを持続的に発展させられるといっても過言ではないでしょう。
step3.勝ちパターンを作る
受注・失注の要因のデータを蓄積し、細かく分析していくと、見込み顧客の課題や状況に合わせた「勝ちパターン」が見えてきます。
その「勝ちパターン」を繰り返し実践し、PDCAサイクルで少しずつブラッシュアップしていきましょう。
メールの内容、電話のトークスクリプトやヒアリング方法、得られた顧客情報の管理など、インサイドセールスの質や営業効率の向上につながる、有益なPDCAサイクルが常態化すれば、自ずと売上や業績も右肩上がりとなっていくことでしょう。
4.インサイドセールスのコツ【ツール編】
営業効率をアップさせるためには、インサイドセールスとフィールドセールスの連携が重要であることについて、これまで何度か触れてきました。
連携をスムーズに行うために、インサイドセールスが得た情報を整理し、データベースとして管理できるツールの導入を検討することも必要になってくるでしょう。
これらのツールには、非常に高額なものがあります。
自分たちの営業スタイルに合った有益な投資となるように、必要なツールを慎重に見極めて検討するようにしましょう。
4-1.CRM(顧客管理システム)
CRMとは、Customer Relationship Managementの頭文字をとったもので、顧客との関係を管理するツールのことです。
見込み顧客の潜在的な段階から受注につながるまでのやり取りをCRMに記録しておけば、フィールドセールスへ案件をつなぐ時だけでなく、他部署との連携の際にも、この情報が効果を発揮します。
顧客の氏名や所属企業、役職などあらゆる情報を一元管理し、適切なアクションの土台を築きます。
4-2.MA(マーケティングオートメーション)
MAとは、Marketing Automationの頭文字をとったもので、その名の通り、マーケティング活動を自動化するものです。
新規見込み顧客開拓におけるマーケティング活動を、可視化・自動化する一連のプロセスを実施するツールのことをMAツールといいます。
それぞれの見込み顧客の状況に合わせたアプローチが大切であることは、先に触れたとおりですが、その調査や分析を人力ではなく、MAツールが担います。
見込み顧客の固有情報や各種情報を一元管理し、育成の実施や確度の高い見込み客の絞り込みまでの活動を自動的に行うことで、営業効率を向上させる役割を果たします。
4-3.SFA(セールスフォースオートメーション)
SFAとは、Sales Force Automationの頭文字をとったもので、フィールドセールスの活動を記録するツールです。
見込み顧客との取引やプロジェクトなど「案件化されたもの」を軸として、営業活動の情報を管理し、円滑に商談を進めていくことを目的とします。
案件の進捗状況や過去の対応履歴を確認できる機能群を備えており、営業活動におけるあらゆる情報を集約します。
SFAは営業活動に特化したものですが、CRMツールと分けることが難しい要素があり、最近は一体化したツールも販売されています。
4-4.オンライン商談ツール
その名の通り、オンライン上で商談をスムーズに行うツールのことです。
新型コロナの影響で、オンライン商談ツールを導入する企業が一気に増加しました。
非対面でありながらも、対面で行う営業活動と重なる部分もあり、さまざまな場面で取り入れられています。
このツールの導入により、オンラインで見込み顧客とコミュニケーションを取りながら、情報収集したり、育成を実施したりできるようになりました。
インサイドセールスだけでなく、フィールドセールスにも効果的ですので、営業効率アップに必要不可欠なツールといえるでしょう。
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まとめ
見込み顧客に対して非対面で営業活動を行うインサイドセールスの登場により、これまでひとりの営業マンが担っていた見込み顧客発掘から契約までの一連の流れを、分業化できるようになりました。
インサイドセールスの質の向上は、企業の業績や売上向上に直結するといえるでしょう。
すぐに実施できることばかりではありませんが、一度整備すればその後の営業活動は格段に効率的かつ効果的になることでしょう。
営業効率をアップさせ、事業を持続的に発展させていくために、インサイドセールスの導入について、またその在り方について検討してみてはいかがでしょうか。
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