営業活動を行う上で、営業資料はなくてはならないものです。
いい営業資料を使っている営業担当者は、それだけで他者より何歩もリードしているといえるでしょう。
他者より秀でた営業資料を作るためには、事前準備が鍵となります。
ただ、営業担当者の中には、「そもそも営業資料って?いい営業資料の作り方は?」という疑問を持つ人もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、営業資料の概要や種類、営業資料の作り方について分かりやすくご説明します。
営業資料とは
営業資料を一言で言うと、自社の看板のようなもので
自社で取り扱っている商品やサービスの魅力を、お客様に知っていただくためのツールです。一口に営業資料といっても、いくつか種類があるのはご存じでしょうか。
まずは、営業資料の種類を押さえておきましょう。
営業資料の種類
営業資料の種類は、用途別に次の3点が挙げられます。
- 新規顧客開拓には「自社紹介資料」
- 商品紹介には「パンフレット」「チラシ」
- 個別提案には「企画書」や「提案書」
新規顧客開拓には「自社紹介資料」
新規の顧客を獲るためには、まず自社を知ってもらうことが重要です。
「自社紹介資料」は、「会社案内」「会社紹介資料」というような言い方もします。
「自社紹介資料」には、自社の企業理念、会社概要、沿革など、記載することが多くある中で一番重要なのは、「顧客にとって何ができるのか」と言う点です。
「顧客のどんな悩みを解決できるのか」ということが適切に伝えられると、商品やサービスにも興味を持ってもらうことができます。
自社の顔とも言える「自社紹介資料」は、どのような会社に見られたいのか、ということを意識したデザインにするのがいいでしょう。
商品紹介には「パンフレット」や「チラシ」
商品やサービスの魅力を、顧客に知ってもらうための営業資料です。
数ページのものから、商品によっては数十ページまであるのが「パンフレット」、両面1枚ものであることが多いのが「チラシ」です。
より情報量が多い「パンフレット」に対し、おすすめポイントのみを凝縮して載せているのが「チラシ」になります。
両者とも、「内容の分かりやすさ」「文字や図などの見やすさ」を重視して作成することが重要です。
個別提案には「企画書」や「提案書」
「パンフレット」や「チラシ」が汎用的であるのに対し、特定の顧客に合わせて内容をカスタマイズした営業資料が、「企画書」や「提案書」になります。
顧客のニーズや悩みに寄り添った提案ができれば、高い信頼を得ることができるでしょう。
営業資料を作る目的
営業資料を作る目的は、先に述べた通り、自社で取り扱っている商品やサービスの魅力を、お客様に知っていただくためです。
営業資料を作る目的について、もう少し掘り下げて考えてみると、次の4点に分類することができます。
- 口頭での説明を補足するため
- 商品の機能や特徴を視覚的に伝えるため
- 情報提供の質を均一化するため
- オンライン営業に対応するため
口頭での説明を補足するため
営業担当者から説明を聞いている時は、「ふむふむなるほど」と思うものの後で考えると分からなくなってしまった、ということはありませんか。
エビングハウスという学者の研究によると、人間は、聞いた20分後には42%を忘れ、1時間後には56%を忘れ、1日後には74%もの情報を忘れてしまうそうです。
「人間は忘れてしまう生き物」なのです。
ですが、営業資料を顧客にお渡ししていれば大丈夫。
説明を忘れてしまったとしても、後で資料を読み返してもらうことができます。
説明したことの半分以上は忘れてしまうんだ、ということを念頭に置いて、忘れてほしくないことを営業資料に載せるといいでしょう。
商品の機能や特徴を視覚的に伝えるため
人は外界から得る情報のうち、視覚から得る情報は80%にもなると言われています。
営業資料の中に分かりやすいグラフや図を載せて、視覚的に情報を伝えることは、営業活動を行う上で非常に有効です。
情報提供の質を均一化するため
営業職は、個々のトークスキルや知識・経験などによって、商談の成功率に差が出る職種です。
営業資料は、トークのスキルや経験が不足していたとしても、情報の量や質の面でそれを補うことができます。
つまり、誰が説明したとしても、同じ量・質の情報を顧客にお届けできるのが良い営業資料です。
それが、属人化の解消であり、顧客の満足度アップにもつながります。
より優れた営業資料を作成して組織で共有し、ブラッシュアップし続けていくことが、組織としての営業力向上にもつながるのです。
オンライン営業に対応するため
コロナ禍によって、営業担当者が顧客と直接面談する機会が減ってしまいましたが、その代わりに、アプリを使ってオンライン面談をする機会が急激に増えました。
オンライン面談では、相手と画像を共有することができるので、営業資料を一緒に見ながら、説明を聞いてもらうことができます。
紙からデジタルへ、対面からオンラインへと移行が進むにつれて、これからもより一層、分かりやすい営業資料のニーズが高まって行くでしょう。
営業資料の作り方
営業資料を作成するためには、事前準備、営業資料を構成する要素の洗い出しが必要になります。
営業資料を作るための事前準備
営業資料を作成するためには、事前準備が欠かせません。
ただやみくもにスタートするのではなく、事前準備の段階から、ゴールを見据えたシナリオを作りが重要になります。
このシナリオが、営業資料の骨子となる重要な部分になります。
ターゲットが誰かを考える
営業資料を作成するためには、まず対象が誰なのかをはっきりさせる必要があります。
法人、個人、業種、年齢、性別など、ターゲットに合わせた資料を作成することで、より顧客のニーズに沿った商品提案ができます。
営業資料を使用するシチュエーションを考える
大きな会場で大勢を前にした説明会なのか、少人数でより踏み込んだ対話ができるような環境なのか、それによって、資料の文字・図・表のサイズや色使いなどを変える必要があります。
プロジェクターを使ったプレゼンであれば、PowerPointのアニメーション機能などもうまく活用すると良いでしょう。
営業資料を見る前後の、顧客の反応をイメージする
プレゼンを聞く前後の顧客の反応をイメージし、反応別のシナリオを用意しておくといいでしょう。
最初から興味がありそうなのかなさそうなのか、聞いた後の反応はいいのかよくないのか、それによって打てる打ち手を考えておきましょう。
営業資料の構成を考える
先に述べた、ターゲット層やシチュエーションなどを踏まえて、営業資料の構成を考えます。
営業資料を通して、最終的にどのようなゴールに持っていきたいかというシナリオを考えながら、項目ごとに話す順番を考えます。
このシナリオに失敗すると、主張がぼやけたり、ゴールまで持っていくことができなくなったりします。
顧客から寄せられる質問や悩みごとについても、この段階である程度想定してシナリオを作成しておきましょう。
営業資料に必要な要素
営業資料の構成ができたら、次は作成するのに必要な要素を肉付けしていきます。
必要な要素は商品やサービスによっても異なりますが、主に次のようなものが例として挙げられます。
概要
プレゼンの導入部分になります。
冒頭から商品やサービスの説明をするのではなく、一般的に想定される問題点と課題を提起し、顧客に対して、ニーズ喚起=潜在的なニーズに気が付かせるような事例を記載します。
詳細
商品やサービスの要点を簡潔に説明します。
その商品やサービスが、どのような機能や特徴を持っているのかを、分かりやすい文章で説明しましょう。
商品はできるだけその商品のイメージを現した写真も載せます。
ただし、営業資料は取扱説明書ではないので、細かい機能を羅列するのではなく、課題解決までのプロセスが具体的にイメージできるような例を記載します。
概要で挙げた問題点や課題に対して、これから提案する商品やサービスがどのようにお役に立てるのか、という点をアピールするといいでしょう。
事例紹介
ここが一番大事な部分になりますが、営業資料の構成を作成する段階で想定した、顧客の悩みごとに対応できるような具体的な事例を紹介します。
どのように悩みを解決できるのかをここで具体的に提示することで、顧客に商品・サービス購入後のイメージを掴んでもらいます。
モデル料金プランの提示
顧客に商品やサービスを購入いただく前に、金額のイメージを掴んでいただくため、一般的なモデルケースと料金プランを提示しましょう。
料金が折り合わない場合を想定して、不要なサービスを削ったプランや逆に補償やサービスを追加したプランなども併記しておくと、柔軟に対応することができます。
購入代金以外にも諸費用がかかる場合は、トータルの費用も明示する必定があります。
申込方法
料金プランの段階で購入の意思を確認できたら、すぐに申し込み方法をご案内します。
検討する、という回答だったとしても、ここで申し込み方法を提示しておけば、その後実際に購入いただけることになった場合にもスムーズです。
リスクやデメリットなどの重要事項説明
購入いただく前に、必ずリスクやデメリットなどをご説明しておく必要があります。
ここで説明をしておかないと、後々トラブルになることがありますので、必ず文章で明記しておきましょう。
よくある質問
よくある質問をQ&A方式でまとめておくと、商談の際に一緒に見ていただきながらご説明することができます。
また、後から顧客ご自身にも確認していただくことができます。
問い合わせ先、アフターサポートの明示
商談が終わった後に不明点が出た場合の問い合わせ先や、アフターサポートがある商品の場合は、利用方法をご案内しておきます。
結果につながる営業資料の構成とデザイン
せっかく時間をかけて営業資料を作成するのですから、結果につながるようなものに仕上げたいですよね。
以下のような点を工夫して作成するだけで、ぐっと洗練された営業資料になるでしょう。
1つのスライドに1つの内容
情報量が多すぎると、どこが大事なポイントなのかが分かりにくくなります。
また、顧客が資料を読むことに集中してしまい、肝心のプレゼンを聞いてくれない、という事態になりかねません。
1つのスライドには1つの内容に絞り、何を伝えたいのかということを明確にしましょう。
一読で要旨が伝わるタイトル
営業資料に限らず、タイトルがイマイチだとその先を読む気になりません。
また、契約の決定権者は忙しい方が多いので、パッと目に入るタイトルだけを読むこともあります。
一言で伝えたいことのイメージが伝わる、インパクトのあるタイトルを考えることが重要です。
相手軸を大切にした内容
顧客にとって分かりやすい内容になっているか、文章の量は適切か、プレゼンの長さは適切か、自分軸ではなく相手軸を大切にし、客観的な視点でチェックすることが必要です。
グラフや表で数字を見せて説得力を持たせる
具体的な数字を見せて説明した方が、何がどのくらい優れているのかなどを具体的にイメージしやすく、説明に説得力を持たせることができます。
機能の違いや値段などは、他社商品と比較した表を載せると、よりイメージがしやすくなります。
読みやすく目を引くデザイン
フォントの大きさや種類を統一し、色使いは三色までにすると読みやすい資料となります。
また、商品やサービスが伝わりやすいようなデザインを心がけるのも効果的です。
人の目線の流れは、上から下、左から右へと動きます。
これを「Zの法則」と言いますが、これを利用して、読んでもらいたい大切なことは、上部や左側に配置すると目に留まりやすくなります。
営業資料の作り方における注意すべきポイント
ここまで、結果につながる営業資料の作り方をご説明してきましたが、最後に作成する上で注意すべきポイントについても確認しておきましょう。
文字を詰め込みすぎない
書きたいことは山ほどあると思いますが、読み手に負担のない量に留めておきましょう。
あまり文字数が多いと、飛ばし読みをされてしまう可能性が高くなります。
せっかく作った資料も、読まれなければ全く意味がありません。
ある程度の余白を作って、足りない部分はグラフや図などで補足しましょう。
専門用語には解説をつける
なるべく専門用語は使わず、使わざるを得ない場合は必ず解説をつけましょう。
商品改定に合わせて内容もブラッシュアップする
商品改定のたびに営業資料の内容も更新しましょう。
古い情報をそのまま載せていると、契約誤りなどの事務ミスにつながる恐れがあります。
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まとめ
営業資料の内容は作り手によって千差万別ですが、きれいな資料を作ることよりも、「誰のために」作る資料なのかということを、常に念頭に置きながら作成することが一番重要になります。
決して、商品やサービスを売り込むのではなく、顧客のメリットになることの提案、顧客のお悩みを解決するお手伝いをさせてもらうという姿勢で臨めば、おのずと成果につながっていきます。
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