「死の谷」とは?ベンチャーや新規事業が直面する壁の乗り越え方

中小企業診断士と新規プロジェクト

ベンチャー企業や新規事業の立ち上げは難しく、対策をせずに立ち上げに臨んでも理想的な結果には繋がりません。新製品や新サービスの立ち上げがうまくいかないことを表す言葉に「死の谷(デスバレー)」というものがあります。

この記事では、死の谷とセットで使われることが多い、魔の川やダーウィンの海と死の谷について、どのような状況を示す言葉なのかを解説します。また、新規事業やベンチャーの立ち上げがうまくいかない主な原因となる、死の谷を乗り越えるためには、どのような取り組みをすればいいのかを紹介します。

これから新製品や新サービスの立ち上げを控えている方やなかなかうまくいかないと悩んでいる方は、参考にしていただければと思います。

魔の川・死の谷・ダーウィンの海とは

魔の川、死の谷、ダーウィンの海は研究開発から事業化までのプロセスを4つのステップに分解した場合、次のステップにうまく移行する際の壁を表す言葉です。そこで、まずは研究から産業化までのプロセスを明確にし、魔の川、死の谷、ダーウィンの海それぞれについて解説します。

研究から産業化までのプロセス

研究から事業化に至るまでには、一般的に次の4つのステップが存在します。

  1. 研究:シーズを作り出す
  2. 開発:製品を作り出す
  3. 事業化:製品を付加価値のある商品にする
  4. 産業化:商品を元にビジネスにする

この、それぞれのステップ間に存在するのが、魔の川、死の谷、ダーウィンの海です。

魔の川

魔の川は、研究ステージと開発ステージの間にある障壁のことで、技術経営のコンサルティングを行っている出川氏が使い始めた言葉です。

研究を行い新しい技術が開発されれば、それが製品化、商品化に繋がる時代には、研究と開発はまとめてR&D、研究開発とされていました。しかし、近年は新しい技術が生まれたとしても、それがすべて製品化、商品化されるわけではありません。そこで、研究で生まれた技術を開発に移行させるために、従来はなかった壁ができています。

研究と開発のもっとも大きな違いは、発散型か収束型かという点です。研究は、新たな技術シーズを見つけるために、さまざまなことを試していく発散型です。一方で開発は、研究で得られたシーズを製品に絞り込んでいくため、収束型となっています。

死の谷

開発と事業化の間に存在するのが死の谷で、これは米国標準技術局(NIST)が作った概念です。ベンチャー企業を設立したり、社内で新規事業を立ち上げたりした場合、それを事業化するまでは、売り上げがないため資金の流入はありませんが、開発や認知度向上のために経費が必要であり、赤字の状態が継続します。

このような厳しい状況が長く続くと、会社の資金が枯渇してしまい、ベンチャーや新規事業は失敗に終わってしまいます。これを、カリフォルニアに実際にある砂漠名のデスバレーから名づけられました。

米国では比較的アーリーステージでの投資が多い傾向にありますが、日本のベンチャーキャピタルはそうではありません。ある程度道筋が見えるまでは外部資金の獲得が難しいため、注意が必要です。

ダーウィンの海

事業化と産業化の間に存在するのがダーウィンの海で、これはハーバード大学の教授が用いたものです。商品化に成功し、それを生産・販売していく過程で、多くの既存企業との生存競争が激化していきます。これまで生き残ってきた既存企業に打ち勝つか、差別化して異なる市場を獲得しなければ、生き残っていくことはできません。

厳しい生存競争を生き残る難しさに対して、オーストラリアに実際にある海からダーウィンの海と名付けられています。

死の谷の乗り越え方

ベンチャーや新規事業を成功する際に、もっとも大きな壁である死の谷を乗り越えるためには、どのような取り組みをしていけばいいのでしょうか?

死の谷の要因となる要素は、技術の優位性や自社の開発・生産体制などさまざまな要因が考えられますが、それらを深堀していくと資金面の課題に帰着します。ある程度資金に余裕があれば、開発の方向性を変更したり、生産体制を再構築することも可能ですが、資金に余裕がなければ検討をする時間を作れません。

そこで、死の谷を乗り越えるために重要なのは、厳しい状況を想定し、生き残るための資金を確保することです。できるだけ長く生き延び、死の谷を克服するためには、次の3点が重要です。

  1. 経費削減:無駄な費用の圧縮
  2. 資金獲得:あらゆる手段で資金を確保
  3. 売上増大:できるだけ早く売れるものをつくる

事業化をする際には、設備投資や人員の確保など多額の費用が必要です。しかし、死の谷を引き寄せる要因が資金不足であることを理解し、後回しにできるものは後回しにし、必要最低限の費用のみに抑えることが重要です。また、売れる商品を作り、売り上げが上がってくれば、ベンチャーキャピタルなどからの資金調達をしやすくなります。

このように、出費を抑え、できるだけ多くの資金を獲得することで、死の谷を乗り越え事業化を実現するためのチャンスが大きくなっていきます。まずは、経費削減、資金獲得、売上増大の3つをしっかり押さえておきましょう。

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まとめ

新規事業やベンチャーの立ち上げにとん挫する際にぶつかる壁として、死の谷に加えて、魔の川やダーウィンの海について解説しました。立ち上げの4ステップを把握することで、3つの壁についても理解できるでしょう。

中でも特に死の谷を越えられない場合が多く、その要因は資金不足に帰着します。出費を最低限にし、売れる商品を作って投資資金を獲得することを意識して取り組めば、生存期間を延ばすことは可能です。 生き残ることを最優先に置き、何が必要で何が後回しにできるのか、考えながら取り組む必要があります。

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